大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」RELAY COLUMN

教育学部

2024.07.10

キラキラ輝く毎日を過ごすこと

筆者:松本直子(教育学部准教授)

1. 『あそび』を通して学ぶこと

 皆さんのこどもの頃は、どんな遊びが好きでしたか?
 私は、草花を摘んだり、友達と鬼ごっこや、ドッジボールをしたりすることが大好きでした。では、皆さんは、『あそび』と聞くとどのようなイメージが浮かぶのでしょうか。「いつまでも、遊んでないで勉強しなさい」と何度も言われた人には『あそび』は良い心象ではありませんね。
 しかし、保育や幼児教育の世界では『あそび』はとても大切で、『あそび』を通して子どもたちは、喧嘩したり、上手にできるようになるまで何度も繰り返したりしながら、様々なことを学んだり、成長したりします。そして、子どもたちは、遊びを通じて将来の学習への興味を育む基盤が築かれています。
 例えば、子どもたちと一緒に遊ぶと、いつも感じるのですが、子どもたちの見ている世界はとてもキラキラしています。ある夏の日、セミの抜け殻をたくさん拾ってきて大事そうに私にくれました。大人から見れば、単なる抜け殻ですが、子どもたちには美しく光る琥珀色の宝石なのです。「先生、目をつむって座って」というので、その通りにすると「綺麗なブローチだよ。先生めっちゃ可愛くなったよ」と言って、抜け殻が壊れないように、そっと両手で包みながら、私の洋服に優しくつけてくれました。また、ある子どもは、「先生、なんでセミって、服、脱ぐん?」と物事の不思議さに気が付きます。
 このように毎日子どもたちと一緒に遊ぶことで、子どもの持つ純粋な視点や感性、科学的な眼差しに触れることができ、『あそび』の大切さを体感します。子どもの目を通した、輝く世界をつい忘れてしまいそうになる私ですが、いつまでも、同じ目線で共有する事、楽しさ、美しさ、こどもの心もちに感動できる大人でありたいと思っています。

2. 愛着と信頼関係

 さて、子どもには『あそび』が大切だとお話しましたが、それ以外に大切なことは何でしょうか?
 それは、『愛着』といって一定の大人との情緒的な絆をつくること。これが今後の人間関係を構築する上で、最も重要だと考えます。愛着は子どもの安定した発達にとって不可欠であり、信頼関係を築くことで子どもは安心感や自己肯定感、社会性などを育むことができます。また、愛着は自己調整能力の基礎ともなり、困難な状況に対するレジリエンス(回復力)を高める役割を果たします。ですから、私は日々の生活の中で、子どもたちや大学生と共に過ごす時間を大切にし、その瞬間、瞬間の輝きを感じ取ることができ、信頼関係を結べる大人でありたいと願っています。そのためには、自分自身も好奇心旺盛で、柔軟な心を持ち続けることが重要です。
 さらに子どもたちの目を通して見る世界は、私たちにとっても新たな発見と喜びをもたらします。そして、彼らの成長を見守り、その過程を一緒に楽しむことができるのは、何よりも素晴らしい経験です。
 大阪体育大学では、楽しさと子どもたちの目線で見るキラキラを、実感できる学びと実践が展開されています。皆さんと共に、子どもたちの健やかな成長をサポートする保育者として成長してみませんか。

【参考文献】
?幼稚園教育要領 文部科学省
?Bowlby, J. (1969) Attachment and loss: Vol.1 Attachment and loss. New York: Basic Books.(黒田実郎? 大羽 蓁?岡田洋子(訳)(1976)母子関係の理論Ⅰ 愛着 岩崎 学術出版社)
?清水美恵?相 良 順 子 中学生のレジリエンスと適応との関連モデルの検討 ―対人関係に注目して―Japanese Journal of Applied Psychology 2019, Vol. 45, No. 2, 105-114 原 著

キーワード
  • 保育者
  • 乳幼児の遊び
  • 愛着

松本直子(教育学部准教授)

保育士?幼稚園教諭?スクールカウンセラーを経て大学教員。 専門は、幼児教育?発達心理学。こどもや保育者の情動知能(心のIQ)や保育者の質の向上について研究をしている。

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